スクープ!統一教会2世「解散命令阻止!」街頭遊説隊は教団主導ミッションだった

今年のゴールデンウイーク後半、都内各所で統一教会の現役2世信者グループが解散命令に反対する街頭演説を行った。「有志による自主的な活動」との触れ込みだったが、入手した教団内部資料には2世信者を使った教団による策動の痕跡があった。現場取材では韓鶴子総裁による「2世を動員しろ」との指示があったとの証言も得た。人通りのない国会議事堂前で街宣を行い、動画撮影を行う思惑とは。様々な疑惑を検証する。
鈴木エイト 2025.05.08
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通行人がいない雨天の国会議事堂前

 ゴールデンウイーク(GW)最終日、人通りがまったくない雨天の国会議事堂前に200名ほどの若者が集結。その視線の先を追うと、お揃いの青い襷を付けた80人ほどの男女が一塊になってシュプレヒコールを挙げている。

「世界に届けー!」「2世の声!」「世界に届けー!」「2世の声!」「世界に届けー!」「2世の声!」

<b>国会議事堂前で「世界に届け!」「2世の声!」シュプレヒコールを挙げる2世信者たち (撮影:鈴木エイト)</b>

国会議事堂前で「世界に届け!」「2世の声!」シュプレヒコールを挙げる2世信者たち (撮影:鈴木エイト)

 この若者たちは統一教会(世界平和統一家庭連合)の現役2世信者たちだ。私がゴールデンウイーク後半の5月4日から6日、連日都内を回って探していた取材対象だった。

2世の遊説隊【N.A.B.I】と【ユナイト】

 なぜなら、ゴールデンウイーク期間に全国各地から2世信者が都内に集結し、【信教二世 特別遊説隊N.A.B.I(Next-generation Alliance of Belief and Intercession/信仰と他者への祈りの次世代同盟)】として、統一教会への解散命令に反対する街頭演説を行うとの情報を得ていたからである。

 ゴールデンウイーク後半の「3日路程」として2世信者が80人規模で街頭演説を行うとの情報を得た私は、都内各所を回った。この【N.A.B.I】というグループは、note.のほかに複数のSNSのアカウントがあり「僕たちは街頭に立ち、声を上げる決意をしました」といった〝有志の2世による自主的な活動〟とのアピールは盛んに発信していた。だが、どこで街頭演説を行うかといった肝心の情報をまったく出していなかった。

 教団の2世による活動といえば、時の政権の意を受けて2016年から17年に教団が2世に行わせていた疑惑のある【勝共UNITE(ユナイト)】があった。

 教団への解散命令が出されたタイミングで活動を始めた【N.A.B.I】は、ユナイトと同様に教団が2世信者に行わせているものなのか、それとも本当に2世が自主的に展開している活動なのか。現地で取材を重ねた。

「3日路程」初日(5月4日)

 5月4日午前、街頭演説場所が池袋から渋谷の間ではないかと当たりを付けて回ったが、一向に見つけることができない。渋谷区松濤の教団本部前に行くと、私が本部ビルに近づいた瞬間、1階窓のシャッターが全て閉まった。毎回恒例の風景である。相当、警戒されているようだ。

<b>鈴木エイトが近づくと教団本部の通りに面した窓のシャッターが閉まる(撮影:鈴木エイト)</b>

鈴木エイトが近づくと教団本部の通りに面した窓のシャッターが閉まる(撮影:鈴木エイト)

 13時35分、【N.A.B.I】.のX(旧Twitter)に国会議事堂前で演説を行ったことが投稿。休日の国会議事堂前と云えばほとんど人通りがない場所だ。意外な場所での街頭演説である。人前での活動自体を意図していないのではないかとも思える行動だ。

 渋谷駅ハチ公前広場で解散命令に反対する演説をおこなっていた統一教会の壮婦信者に「2世信者の遊説隊が人のいないところで演説する意味がわからない」と言うと、こう返答が返ってきた。

「あなたにはそう思えるでしょうね、でも私たちは神に向かってやってますから」

 通行人ではなく、神に向かって演説するのであれば、人通りのほぼない国会議事堂前での演説も意味があるということなのか。あるいはSNSやYouTubeでの拡散を意図しているのではないか。

新宿駅南口

 その1時間後、新宿駅南口前の歩道で演説する【N.A.B.I】メンバーを見つけた。メンバーは10数人、どうやら5~6グループほどに分かれて活動しているようだ。

<b>新宿駅南口前で演説を行うN.A.B.I (撮影:鈴木エイト)</b>

新宿駅南口前で演説を行うN.A.B.I (撮影:鈴木エイト)

 2世たちの演説に対面で居並ぶ聴衆から大きな拍手が起こる。年恰好から2世の親世代の様だ。さっそくN.A.B.Iメンバーに取材を行った。

――人がいないところで、あえてやる意味はあったの?

「国会議事堂というところでやりたかった」

――ここは二箇所め? 分かれてやっているの?

「そうですね。結構いろんなところで分かれてやってます」

――教団から言われてやっているの?

「2世が立ち上がったという感じです」

――立ち上がった? 教団が募集して始めたのではなくて? 

なくて、普通に2世が立ち上がりたいということで

――2世発の運動ということ? 本当に? ユナイトもそうだったけど教団がお膳立てして集めて、やるというのが今までのパターンだったんだけど。これは違うの?

「そうですね、今回からだいぶ変わりました」

――そうなんだ、怪しいな

「そう見えますよね(笑)」

――教団が全国に募集して、研修してみたいな感じではなかったの? 組織的に統制が取れている。全国に呼び掛けて募集したという感じ?

「はい。ゼロ人でも仕方ないので本当に有志が

――それは誰が募集したの?

「募集自体は…」

――教団経由で来た話ではなくて?

教団経由っていうよりかは、教団に向かって〝私たち出たいです〟と言って、それから」

――始めたのは誰?

「始めたのは…」

――影山君?(N.A.B.Iの代表、影山権龍氏)

「はい」

――彼は教会長だよね、教団発の運動ではないの?

ではないです

――こういうことをやるのなら、ここでやりますよという発信をなぜしないの?

「傷害事件みたいなことが起こるのも嫌なので」

ユナイトの中心メンバーが副代表に

 続いて【N.A.B.I】の副代表、新田剛氏に訊いた。彼はユナイトの中心メンバーの一人だ。

――大物2世も参加してるんだね

「参加してます(笑)」

――さっき国会議事堂前でやってたんだね、あまり通行人いなかったでしょ?

「まあ」

――この運動を始めたのは教団からやれと言われてやっているの? ユナイトみたいに。この運動を始めた経緯は2世が自主的に?

教団の指示とかではないですね

――教団が、何か研修とかやって?

いえ

――募集して、ということはなかったの?

いえ、2世たちで全部動いてます

――本当かな? 今までのパターンだと。きちんと統制も取れているし。襷とか横断幕も

「横断幕とかそういう経費はもちろん出してもらっています」

――支援はしてくれているけど、人の募集とかそういうのは全部自分たちでやっていると?

教団から言われたからやっているとかではありません

――80人? 凄いね、そんなに集まるんだ。みんな顔を出してやっていて大丈夫なの? 新田君は有名な2世だけど

「(笑)」

韓鶴子総裁「2世を動員しろ!」

 チラシ配りをしていた2世信者にも訊いた

――なぜ国会議事堂前で?

「首都中心部という意味じゃないですか」

――人が集まるところでやればいいのに

「そこは代表が…」

――この運動自体は誰が始めたことなの?

「影山さん」

――彼は2世で新潟の教会長だったよね。彼が呼びかけてということ?

「はい、呼びかけて」

――教団経由で人を集めたりということではなくて?

ではないですね。田中会長は〝2世が傷つく姿が見えないから〟、お母様(韓鶴子総裁)は〝2世を動員しろ〟と言ったのですが、田中会長は〝それができない〟と言って、影山さんが2世に呼びかけて」

――2世のそういうネットワークがあると?

「いやN.A.B.Iというので募集を掛けて、やりたいという人が」

――ゴールデンウイークにやるから、やりたい人は名乗り出てくださいと?

「そうですそうです」

――教団経由で募集したということではないと?

ではないですね

――影山君は今も教会長?

「CARP(原理研究会/原理研)会長です」

――CARPの会長になってるんだ。ユナイトもそうだったけど、実は教団の呼びかけ的な募集をして始まったみたいなのがあるんじゃないかと。これもそうじゃないかなと思うんだけど、そうではないと?

「あーそうではないと思います」

――実際、これの研修とかやったわけでしょ?

一応、田中会長が、あと影山さんからもお言葉はいただいて」

――昨日まで準備して、研修をやって?

「心構えなどを」

――それは浦安の研修所で?

「松濤本部で」

――宿泊は? 80人も泊まれたりするの?

「76人です。最初40人の募集だったんですけど、それが76人まで増えたという感じで」

教団からの「募集」を否定

――その募集は影山君がやったの?

「そうですね、チラシとか作って」

――教団が募集したわけではなくて?

ではないですね

――地方から来た人は旅費等大変だと思うけど

「それは一応、出るらしいです」

――教団が出してくれると?

「出してくれる」

――それは良心的だね。宿泊は?

「学生寮です」

――そういうところがあるんだ?

「はい、一応無理やり泊めてもらって」

――明日、明後日もこれをずっとやるの?

「そうです、あ、でも明後日は松濤本部で」

――明後日はこういう街頭はやらない? 明日まで?

「明後日が、最後東京駅で」

――何時に?

「10時ぐらい」

 最終日、5月6に東京駅前で最後の街宣を行うという。

 再び、新田副代表に訊いた。

――聴衆は父兄の方たち?

「もいると思いますけど、応援に来てくれている」

――みんなが話している内容は、各自がそれぞれが考えて言っているの? それともこういう感じで話しましょうみたいなことが研修で?

「ないです」

――こういうテンプレートでこれは言ってくださいみたいな。そういうのは特にないと?

「ないです」

――自主的に?

「自分で作っています。自分の実体験なので」

街頭演説を行うN.A.B.Iメンバーを取材する筆者(右) (撮影:ジャポニスタン氏)

街頭演説を行うN.A.B.Iメンバーを取材する筆者(右) (撮影:ジャポニスタン氏)

応援に駆け付ける親世代の者たち

 【N.A.B.I】の応援に来ていた聴衆にも取材した。

――皆さんは親御さん?

「いえ、応援に来てます」

「エイトさん、感動してるんじゃないですか?」

――感動ですか? 2世にこういうことをやらせるのはどうなのかな

やらせるのではなく、有志なので。これ」

――教団が募集したんじゃないですか?

違います、有志です」

――結局こういうのって、これまでもユナイトもそうだけど、2世の自主的な活動って言いながら、実は教団が全部お膳立てして募集してやらせてるパターン多かったったじゃないですか

「有志です」

「聴いて判るんだけど、コンテンツ。これ私たち全然介入してないですよ」

――お母さん、役職は?

「ヒラ信徒」

――こういう活動をするにあたって募集みたいなものは教団から回ってこなかったんですか?

全然、どこでやるかは昨日回ってきたけど」

――組織的に統制が取れてるじゃないですかみんな、お揃いの襷をしたりとか、ちゃんと研修もやってたっていう

「それはね、練習はしますよ。だけどこういう訴えたいということは自主的に誰にも言われずに。パッションを感じて欲しい」

――情熱を? それは感じますね。

「襷とか目につきます? どうでもいいしゃないですかそんなこと」

――僕も信者の信教の自由を守るために言論活動してますから。ちゃんと残余財産が天地正教に行くってことも決まっちゃってるし、別に大丈夫じゃないですか

「違います。なくならないし。解散しませんので」

――あ、そうなんですか。

「解散するなんて思っていませんので」

――でも教団側解散をにらんで、残余財産の帰属先を天地正教に2009年の6月23日に変えていてるじゃないですか?

「外国人記者クラブで言っておられましてたね、私有財産が880億?エイトさんに訊きたかった。どうやって調べたんですか?」

――解散命令の決定文書に書いてありますよ

「880億? 現金で?」

――2期前に現預金、現金と預貯金ですね、不動産と合わせて1200億円以上。解散命令の決定文書で教団の内部資料が添付されていて、そこからの数字なので、僕もそこで初めて知ったので

「でもですね、本当にですね、ランドスライドってやつ、大逆転を信じているので。私、解散するなんて全然思ってないです」

――高裁で逆転がありうると?

「はい。だって本当そうなんですよ、あのね。原理的に言ったらですね、この3分の2まではサタンの主管圏なんですけど、3分の2を超えたら…」

――大丈夫ですか? 僕はサタン扱いされてないですか?

「エイトさんはサタンの表示体(笑)」

――サタンの表示体?

「なんかあれですよね、こちらのこと『悪』って言われているから」

――悪? 僕、悪なんていってないですよ

「もう一人の方」

――もう一人?

「アナウンサーみたいな風貌の方が…」

――アナウンサー?

「本当は感動してるんですよね」

――いろいろ心は動かされてますよ

「でしょう。分かりますよ。さっき言いましたけど、原理的にもですね、苦労がつきまとうのは、1,2,3の二段階までで、三段階目まではサタンが対応できないから…」

――そんな話はどうでもいいので

「あ、そうですか」

――清平に皆さんが研修に行かれてお金を運ぶみたいな話が最近出てるんです。ゴールデンウィーク終わった後に、毎日何百人も行くって話が出てたんですけど、そういう話はあるんですか?

「じゃなくて。新しくできた天宛宮の見学ツアー」

――金額が一人15万とか

「え?、どこから聴くんですか?」

――教団職員の近親者が投稿してましたよ

「投稿をチェックしてるんですか?」

――全部が全部じゃないですけど、

「入宮式に入れたのは一握りなんです。だからこれ」

――もったいをつけて?

「そこでちゃんとみんな順番に行けますよっていう」

――渡されたお金を仁川空港で回収するとか、そういうのはもうやってないんですか?

「やってない」

――昔よくやっていたとそういう話を聴くくんですけど

天宛宮はバチカン?

「でもね、やっぱり日本のこんなふうになっても、あんなに立派なね。教会のバチカンと言われる」

――統一教会のバチカンって言われてるんですか?

「そうなんですよ」

「でもエイトさん。本当は感動してますよね」

――ええ、ちゃんと事実を報じなければと思っているので

「取材のし甲斐があるでしょう?」

――そうですね、凄くありますね。記事を楽しみにしてください

「でもね、同じ事実でもね、ちょっと見方によってまた印象が違うのでね」

――基本的に事実しか書かないので大丈夫です

「事実を書いててもね、印象操作っていうのがね」

――そうなんですか?

新宿駅東口駅前広場

 その後、新宿駅東口駅前広場でも【N.A.B.I】メンバーが街頭演説を行っていた。やはり人数は13~14人ほど。早速直当て取材を行う。

――演説場所をなぜ公表しないの?

「場所は言えないんですよ」

――宣伝した方がいいのでは。SNS戦略ならフォロワーが14万人以上いるから発信してあげようと思ったのに、場所が判らないから

「そうですよね。ルールを守らないといけないので」

――ルール? 鈴木エイトには教えるなという?

「あーいえいえ違います(笑)。特定の人ではなくて、場所は教えずにという感じで」

――これは教団の指示でやっているの?

いえ、違うんですよ、皆、有志でやらせてもらってるんですよ」

――教団が2世を募集してみたいな、そういう流れはなかったの?

「そういうことですか、それはないですよ」

――じゃあスタートは? 誰が? 声を?

「スタートは2世たちです」

N.A.B.Iメンバーを取材する筆者(撮影:ジャポニスタン氏)

N.A.B.Iメンバーを取材する筆者(撮影:ジャポニスタン氏)

――影山君とか?

「まあ、2世たちがやりましょう! ということでそういう有志が」

――2世のネットワークみたいなあってそこから?

「まあ、その2世ですからね」

――それに教団本部とか成和部は関わってないの?

特には。2世たちで一緒にみんなでやりましょうと」

――すごくみんな統制がとれていて。研修もあったの?

「研修ぐらいは…」

――浦安の研修所で?

「いえいえ」

――結構地方からみんな最初40人って話を聞いてて、そしたら80人ぐらい。76人。そんなに応募が一気に?

「そうですね。そうですそうです」

――最初、40人ぐらいの数で抑えようみたいなこと?

「いや、そういうわけじゃなくて、推定。おそらく」

――そのぐらいしか来ないだろうと思っていたら一気に80人ぐらいに?

「皆、今この時だから、やりましょうと」

――何を使って募集を掛けたの?

「媒体ですか? 2世たちのネットワーク、LINE

――そういうのがあるんだ?

「そうですそうです」

――そこで口コミとかSNSで?

そうです

(教団本部は)「関わっていない」

――それに教団本部は一切関わってないの?

関わってないですね。あんまりこう、なんというか。本部としてもあんまり…」

――地方から来てる子たちに、その交通費を出してあげてるみたいな、教団が出してあげているっていうことを聞いたんだけど、それは教団のお膳立てということでは?

「そういうことではない」

――2世の自主的な動きに対して、教団側が、じゃそこは補助してあげようと?

「…」

――横断幕なんかは教団が作ってくれたと言っていたけど

「そりゃそうですよね、僕たち作れないので」

――だとすると教団の組織ぐるみの活動ではないかと言われてしまうのでは?

2世たちが声を挙げるのであれば、協力したいと」

――順番としては2世が声を挙げて、教団が経済的な補助をしていると?

「そこまではわからない」

「詳しくは言えないのでその辺は代表の方と話してほしい」

――話す内容は事前に研修でマニュアルがあるの?

「ないんですよね」

――自分でそれぞれ考えて?

「自分のこれまでの人生経験の中で伝えたいものを一つ選んで

――〝一つ選んで〟っていうのは、いくつか候補が提示されている中からテーマを選ぶと?

「それぞれが感じてきた、わからないかもしれないですけど神様とか両親への感謝とかそういったものを伝える」

――解散命令反対とか2世の人権とか、これは言うべきポイントがあるじゃない?

「僕たちとしては解散命令を阻止したいというのは伝えたい」

 遊説メンバー数人に訊くと、北海道や九州から参加したメンバーもいた。そんな遠方からの参加者に訊いた。

――旅費は 教団が出してくれるの?

「そうですね、支援してくれます」

今後も活動を継続?

 GW期間の3日間以降も継続して活動するという。解散命令の請求は地裁の決定後、教団が即時抗告を行い高裁において審理中である。高裁で解散命令が決定すれば、この手のアピール自体、行う意味はなくなる。そこがポイントだ。

 現場を取り仕切っていた2世に気になったことを訊いた。

――解散命令を取り下げてほしいと国に要求するのか、高裁で解散命令を出さないでほしいという運動で司法にお願いしているのか、解散命令後に自分たち2世の信教の自由を保障してほしいという訴えなのか、論理的な組み立てが演説を聴いていてもはっきりしない

「基本は何か明確なプロセスというよりかは、どこに向かってどうっていうのは、今やれることが何なのかっていうのを考えた時に有志たちで」

――2世たちが声を挙げると? アウトプット、何を目指してるかっていうのが、いまいち演説内容から目的が判らない。演説が各自の主張になってるからなのかもしれないけど、会としてと何を目的にするのかが今のところわからない

「その辺は精度高めてやっていこうというよりかは、報道などを受けて感じている違和感を伝えたい、喜びを感じている私たちの存在を伝えたいというのが動機となっています。信教2世として解散阻止、黙っていられない伝えたい信教の喜びとか」

教団本部へ質問書FAX

 果たしてこれは2世信者による自主的な活動なのか。統一教会本部の広報へFAXで質問を送った。

『ジャーナリストの鈴木エイトです。本年ゴールデンウイーク期間における貴教団の2世信者の活動について以下の質問にお答えください。

 5月4日~6日に都内で統一教会の2世信者たちが貴教団の解散命令に反対し「信教二世特別遊説隊 N.A.B.I」という名称で街頭演説を行っています。これは2世信者たちの自主的な活動でしょうか? それとも世界平和統一家庭連合(旧統一教会)本部が2世信者を動員、募集して行わせている活動でしょうか?

 お手数ですが5月4日中にご回答をお願いいたします』

 期限までに回答はなかった。

3日路程 2日目(5月5日)

 翌日の5月5日も【N.A.B.I】の取材に回った。影山代表への直当て取材が目的だ。

【N.A.B.I】のSNSをチェックすると高場馬場駅前やお台場のフジテレビ前、さらに官庁街でも街宣を行っていた。いずれも前日の国会議事堂前出の街宣と同様に開始前や演説中ではなく、街宣を終えたあとでSNSにUPしており、街宣場所が掴めない。結局、この日は【N.A.B.I】の取材ができないままだった。その後、【N.A.B.I】のSNSには東京駅前で街頭演説を行っていたことがUPされた。私に街宣場所が伝わったことを警戒し、翌5月6日の演説予定場所だった東京駅前での街宣を5日に行い、日程を入れ替えたようだ。

3日路程 最終日(5月6日)

 最終日の5月6日、朝から雨が降りしきる悪天候のなか、午前9時前から都内中心部で【N.A.B.I】の演説場所を探る。午前10時の段階で東京駅前に遊説隊の姿はない。やはり街宣場所を変更したようだ。思い当たる場所を回ったが見つけられない。10時半、国会議事堂前でようやく【N.A.B.I】の姿を捉えた。

 歩道に4列ほど100人以上の聴衆が並んでいる。若い世代が多い、教団の2世たちが中心だ。【N.A.B.I】本隊はすでに演説を終え、記念撮影に入っている。それが冒頭の場面だ。

国会議事堂前で3日路程の最後の街頭演説を行うN.A.B.I(撮影:鈴木エイト)

国会議事堂前で3日路程の最後の街頭演説を行うN.A.B.I(撮影:鈴木エイト)

「世界に届けー!」「2世の声!」「世界に届けー!」「2世の声!」「世界に届けー!」「2世の声!」

 3度、シュプレヒコールが挙がる。まったく人通りはない。影山権龍代表、小村聡士副代表、新田剛副代表を中心に76人の【N.A.B.I】メンバーが記念撮影を行っている。こうやって動画や写真を録り、SNSやYouTubeで拡散させることを目的としているのだろう。

 教団の佐藤進広報局長がいたので、質問書FAXの件について確認した。佐藤氏は広報担当から外れ、澤田拓也氏が広報渉外局長として対応しているという。

教団の佐藤進前広報局長(撮影:鈴木エイト)

教団の佐藤進前広報局長(撮影:鈴木エイト)

【N.A.B.I】代表、副代表への取材

 影山権龍代表に訊いた。

――影山さん、お疲れ様です。鈴木エイトです。

「初めまして」

――この間、取材させてもらったんだけど、【N.A.B.I】の結成の経緯というのは、どういう形だったんですか?

「経緯ですか、やっぱり3月25日の東京地裁の判決の内容がすごく大きかったので、その衝撃がすごく強くて、そのまま高裁の結果を待つのは苦しいという声が多かったので、2世の有志で」

――結成の経緯は2世から始まったものであって、教団の主導でやったわけではないと?

僕が声を上げて

――募集はどういう形で?

募集は僕から全国の2世たちに届くように

筆者の取材に答えるN.A.B.Iの山権龍代表(撮影:鈴木エイト)

筆者の取材に答えるN.A.B.Iの山権龍代表(撮影:鈴木エイト)

――何かネットワークがあるんですか?

2世のネットワークが教会にあるので

――教団経由で募集したわけではないのですか?

「あの、2世のネットワークで

――教団が募集したわけではないということなんですね?

教団が? 僕が発起人です」

――影山さんが直接?

「発起人です」

――募集に当たって教団が募集したみたいな話もあるが、それは違うということですか?

「また」

 そう言って別の取材の対応へを身体を向ける。

 小村聡士副代表にも取材した。

――ユナイトの時とすごく似てる気がするんだけど

「いや、なんか怖いな(笑)」

取材に答える小村聡士N.A.B.I副代表/勝共UNITE初代代表(撮影:鈴木エイト)

取材に答える小村聡士N.A.B.I副代表/勝共UNITE初代代表(撮影:鈴木エイト)

――2世主導と言いながら、実は教団が主導してるんじゃないかみたいな疑いをどうしても持ってしまうんだけど

「代表の主導ですよ」

――教団が募集して始めたみたいなことじゃないの?

違いますね。代表が募集してくれて、僕も元々知り合いだったので」

――直接、誘われたということ?

「ええ、そうです」

――一気にこんなに2世が集まるのは、2世だけのネットワークでもあるの?

「2世だけのネットワーク?」

――SNSとか

「普通に有志で募って…」

――2世の有志が2世に声を掛けたと?

そうですそうです、代表から声を掛けて。どれくらい集まるか判らなかったんですよ」

――最初40人くらいの想定が80人、76人と聞いたけど

「そうですね」

――思ったよりいっぱい

「少ないかなと思ったんですけど、こんなに駆け付けてくれて」

 再び、影山代表に訊いた。

――本当に教団は募集に関わってないの?

「教団が募集に関わってないのとはどういうことですか?」

――人集めに関して

「…」

 回答を得られないまま、また別の取材の対応に向かう【N.A.B.I】代表。

取材に来ていたメディアは2社

 フジテレビのインタビュー取材を受ける影山代表。ほかに統一教会系の世界日報も取材に来ていた。

フジテレビの取材に答える影山代表(撮影:鈴木エイト)

フジテレビの取材に答える影山代表(撮影:鈴木エイト)

 取材対応を終えた影山代表に改めて尋ねた。

――たびたびごめんね。アウトプットが良く見えなくて。裁判所に解散命令を出さないでくれと言うのが目的なのか。国、文科省に解散命令請求を取り下げてくれという目的なのか。解散命令後に2世の人権を守ってくれということなのか、何を一番求めているのか?

「結果としては解散命令の請求の取り下げ、それをやっぱり一番の目的と据えてますね。ただ、2世の声が世の中に広がりづらいので、それを広げる環境を作りたいという声も多くて」

――この3日間で終わりじゃなくて、今後も続けていくと?

「それは定まってなくて、これから検討していくことになりますね。参加したメンバーたちの声のフィードバックを取りながら、どういうふうに展開していきたいか皆で話し合っていくと思います」

――影山さんは新潟の教会長から今、CARPの会長に?

「ええ」

――これはCARP会長として始めた運動ではなくて?

「ではないですね」

筆者の取材に答える影山代表(撮影:鈴木エイト)

筆者の取材に答える影山代表(撮影:鈴木エイト)

――一個人の2世で、教団は一切関わってないっていう理解でいいですか?

「まあ、バックアップをしてもらっている側面はありますね」

――いろいろ備品を作ってもらったりとか?

「そうです、そうです」

――募集とか、成和部とか一切関わってないんですか?

「成和部が関わって? 呼びかける時にはもちろん成和圏の中には2世はたくさんいるので、通してお願いしているところはあります

――教団が主導してやったわけじゃなくて飽くまで2世がという?

私と代表、副代表の有志でやってます

――具体的に何を使って募集したんですか?

ツールとかはちょっとお伝えしたくないので」

――例えば2世に特化したLINEのグループがあるとか

「LINEのグループはありますよね、それぞれ地域ごとにあります」

――そういうものを通してということですか?

ネットワークはいろいろあるので、いろいろかけて幅広く声を掛けて有志が集まったと」

――親経由じゃなくて? 直接2世に?

親経由じゃないです(笑)」

――2世に直接ダイレクトに募集したって感じですか?

そうですね、はい

 最後に小村氏と新田氏、二人の【N.A.B.I副代表】にも改めてインタビューを行った。

――今回、ユナイトや「信者の人権を守る2世の会」の主要なメンバーがあまり参加していないのは、意見の相違などが?

小村氏「いやそういうのは特に」

新田氏「有志が集まってるので」

――これまで積極的に声を上げていた2世たちが今回参加してないのは?

小村氏「普通に僕もまだ2世の会のちゃんとしたメンバーなので」

――そことの連動はしてないと?

小村氏「連動は今はしてないですね。今後なんかコラボとかするかもしれないですけど」

――なぜこの活動と、そこはまた別なのかなと。その辺りの住み分け違いがよくわからない。あれも2世の運動ではあるわけでしょ、建前的には

「今回は遊説したい人を集めたっていう感じですね」

――遊説が主体、そこでUNITEの遊説の…

「なんか遊説したかったので。まあこうやってこっちの方が結構、性に合っているというか、シンポジウムもいいですけどね」

――「信者の人権を守る2世の会」はこういう対外的なことは特にやってないと

小村氏「あ、でもそれは判らないですね、今後」

新田氏「やりたかったらやるかもしれないですし」

小村氏「遊説したい人ってことで集まって、小嶌さんや成田さんは手を挙げなかったという」

――あんまり人前で話したくないとか

小村氏「いや、そんなことはないと思いますよ」

新田氏「ゴールデンウイークは普通に予定があったのかもしれない」

――これで終わりではないわけでしょ?

新田氏「これから、はい」

小村氏「そうですね。高裁に向けて」

――2世だけのネットワークでどうやって募集したのかというのが良く判らない。LINEグループじゃなくて?

小村氏「そういうのじゃないんですよ。影山さんも顔が広いですし」

――成和部とか教団の組織を使って集めたということではないの?

小村氏「怖いな(笑)」

――その辺りの何でこういう活動に至ったのかが良く判らないので、そこが一番の謎で

新田氏「経緯ですか? 影山さんが」

小村氏「影山さんが。ポジションもあるし、顔もすごく広いので」

――CARPの会長?

新田氏「そうですそうです」

小村氏「僕たちも、もともと」

――口コミからということ?

小村氏「口コミからというか…」

――一気にこれだけ全国から集まっているってことには、何かしら教団が協力しないとできない気はするんだけど?

新田氏「そんなことないと思いますよ」

――2世だけでそういう…

小村氏「たいだい一ヶ月ぐらい集めるのに掛かりましたし」

――2世だけで、じゃあこういうことやろうみたいなことになったら現役の2世たちに情報が回って広まるようなシステムが構築されてるの?

小村氏「いや、そんなんじゃないんですよ。まあ、影山さんが呼びかけたら、これだけ集まったんじゃないですか」

――小村君と新田君よりも顔が広いの?

新田氏「全然、(自分たちが発起人だったら)厳しかったかもしれないですよ(笑)」

小村氏「いや、そんなにないですね」

――僕からしたら二人の方が全然馴染みがあるんだけど、影山くんは教団の会見で2世の教会長として出てきた時に知ったので

新田氏「前から我々のなかでは有名ですね」

――2世のリーダー的な?

小村氏「そんな感じですね。影山さんの方が多分、我々より顔は知られていると思います」

――小村君の方が教団のイベントで2世を代表してスピーチしたりとかしていたよね

小村氏「そうなんですけど」

新田氏「我々もね、知られている方です、大分」

小村氏「我々も知られている方ではあるんですけど、でも正直知らない人の方が多いです。影山さんの方が知られてます」

――自分的には二人押しなんだけど

小村氏「世間はそうかもしれないですね」

――前から顔も名前も出して長年活動しているし。ユナイトはもう全然やってないの?

小村氏「どうですかね、またやってみたいですけどね」

――俺のせいじゃなくて?

小村氏「いや、エイトさんのせいではないです(笑)」

――なんか今回もユナイトっぽい感じがしてるんだけど

小村氏「またユナイトも、もしかしたらやるかもしれない」

――とりあえず解散命令の高裁の審理期間中の運動という理解でいいのかな?

小村氏「今のところは。そうですよね」

再度、教団へFAX送信、回答は「二世の自主的な活動」

 5月6日の正午過ぎ、教団の広報渉外局宛てに再度前日と同じ質問内容を送信し、回答期限を6日午後に設定した。すると6日午後、質問書への回答が広報渉外局から届いた。

>「質問書」に対する回答

>ご指摘の街頭演説は、二世の有志の呼びかけで全国から集った、自主的な活動です。

 やはり2世による自主的な活動としている。回答内容を踏まえ、7日午前、改めて以下の質問書FAXを送信した。

『ジャーナリストの鈴木エイトです。本年ゴールデンウイーク期間における貴教団の2世信者による「信教二世特別遊説隊 N.A.B.I」の活動についての質問書へのご回答ありがとうございます。

>ご指摘の街頭演説は、二世の有志の呼びかけで全国から集った、自主的な活動です

 とのご回答をいただきましたが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)本部は「信教二世特別遊説隊 N.A.B.I」への2世信者の参加について呼びかけや募集にはかかわっておらず、2世独自のネットワークによる呼びかけで集ったということでしょうか?

(今回の街頭演説現場の取材時、N.A.B.Iに参加している2世から、襷や横断幕の作成、遠方からの交通費などは教団からの支援を受けているとの旨の話を聞いています)

お手数ですが5月7日、本日中にご回答をお願いいたします』

 同日午後、回答があった。

>「質問書」に対する回答

>ご質問の件に関して、遠方からの参加者には、交通費を一部支援をしています。その他に関しては、要望が来てからの検討予定です。

 教団本部からの回答を見ると【N.A.B.I】について「二世の有志の呼びかけで全国から集った自主的な活動」という姿勢を崩していない。

 これは果たして事実なのだろうか。実はそうではないことが判っている。ここで私が入手した【N.A.B.I】に関する教団の内部資料を提示したい。

‟答え合わせ”

 私は教団本部からの回答、そして直当て取材時の【N.A.B.I】メンバーの返答とは真っ向から矛盾する教団の内部資料を入手していた。

 そこには教団本部が募集に直接関わり、2世に遊説を行わせるミッションの内容が記されていた。現地の【N.A.B.I】の2世たちから言質を取ったのは、その齟齬を検証するためだ。証拠の画像と共にすべてを以下に公開し検証する。

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