フジテレビ会見の衝撃の裏で気になった「証言の信ぴょう性」と「ジャニーズ問題との関係」

3月31日に開かれたフジテレビ会見。第三者委員会の報告書の衝撃の裏で、看過してしまいがちなポイントについて検証する。見過ごせないポイントがいくつかあり、ここが問題の本質の一つだと感じている。キーマンとなる人物たちの証言の信ぴょう性は担保されているのか、ジャニーズ問題との地続きの事象であったことへの踏み込んだ検証だったのか、見ていこう。
鈴木エイト 2025.04.01
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第三者委員会による報告と質疑応答

第三者委員会による報告と質疑応答

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番組継続判断の理由への違和感

 第三者委員会の報告書には中居氏とフジテレビプロデューサーとのメールのやりとりといった性加害後の経緯、これまで明らかになっていなかったことが記されており、中居氏の対応の酷さと悪質さ、フジテレビプロデューサーによる中居氏への媚び諂いの詳細が記されている。

 様々な事実認定がなされているが、私が気になったのは中居氏の番組を継続させた経緯と理由についてまとめた調査報告書(公表版)の42ページの記述である。

>(4)中居氏出演番組についての検討

>本事案の報告を受けて間もない2023年9月上旬に、港社長、多田専務及びG氏(CX執行役員・編成総局編成局長)は「まつもtoなかい」の扱いについて議論した。しかし、既に同年7月13日において同年10月の番組改編における広告会社向けの説明会が終了し、「オールフィックス」している状況(改編の番組枠が決定しスポンサーに販売していく段階)であったことから、港社長、多田専務及びG氏らは、2023年10月の番組改編に合わせて本番組を終了ないし中居氏の出演を取りやめることは、通例からしてあまりにも急であり、それが本事案に関する関係者からの憶測を呼び、何らかの形で女性Aの耳にも入り、女性Aを刺激してしまうのではないかと思い込み「まつもtoなかい」については出演を継続するとの判断を行った。

最前列で取材

最前列で取材

証言の信ぴょう性に疑問符

 この箇所に引っ掛かりを覚えたので質疑応答で指名された際に質問した。なぜなら前回の会見で、番組継続の判断をやはり港浩一社長(当時)は〝女性の精神面・体調面を気遣ったから〟との旨を述べていたが、どう考えても番組を継続させた方が女性Aへの精神的ダメージが大きいと思われるからだ。そもそも番組の終了など検討すらせず、今後のゲストのキャスティングなど中居氏を起用し続けた方がより高いベネフィットを得ることができると判断したのではないかと、私は前回の会見で指摘した。そこで今回、こう質問した。

――証言の信ぴょう性とその判断について伺います。これは港社長、多田専務、G氏(フジテレビ執行役員・編成総局編成局長)、3人の証言をそのまま羅列したものなのか、それとも第三者委員会として事実認定したものなのか。事実認定をしたのだとしたら、言い方は悪いが口裏合わせなどを防ぐための多角的な検証はなされたのか?

 第三者委員会からは43ページとの記述と勘違いする場面があり、私も自分が言い間違えたのかと思い、その旨を謝罪したのだが、指示した箇所は間違ってはおらず、第三者委の方との間で多少ちぐはぐなやり取りになった。

 だが、その上で第三者委の五味祐子弁護士からは「羅列ではなく、証言によって事実認定をした」「それぞれからヒアリングをしたということと、あとはここの時期、番組改編の時期という段階での証言ということで相応の合理性があるとの判断をした」との旨の回答だった。

 つまり番組改編時期であったことから3人の証言には合理性があり、証言を事実として認定したものだという。ただ、改編時期ということだけで、「女性Aを刺激してしまう懸念」との言説をそのまま肯定してしまっていることには疑問符が付く。この点は調査不足の感が否めない。

 編成幹部3人は番組継続ありきで一連の判断を行ったのではないか、「番組終了が被害女性を刺激してしまうという懸念」というのは、一般市民の普通の受け止めを基にしても違和感しかない。後付けの理由としか思えないのだ。第三者委がその点をさらに深く追及することなく合理性を認め、事実認定してしまっていることは、責任を取る立場にある幹部たちへ適切な処置がなされるのかという点で何かが違うと感じる。

前回の会見で遠藤龍之介氏が「類似形」

 そこでやはり思い浮かぶのが旧ジャニーズ事務所性加害問題を背景にした圧力と忖度との類似だ。前回の会見で私はこう質問した。

――中居氏の起用を続けたことに関しては、中居氏経由で旧ジャニーズ事務所のタレントをブッキングしやすくなるであるとか、そういう意識が働いてなかったのか、結局、旧ジャニーズ事務所問題に関してはメリー喜多川氏の圧力を背景にした忖度によって、いろんなこと、ブッキングなどが行われたのではないかということが指摘されています。国連人権理事会のビジネスと人権作業部会からは〝日本のメディアは何十年もの間、このような不祥事の隠蔽に関与してきた〟という報告が上がっているのですが、そういうことを考えると、今回の案件と旧ジャニーズ事務所の問題を検証、きっちりした検証ができていなかったことと地続きの問題ではないのかという認識を持っています。現状の認識で構わないので旧ジャニーズ事務所における性加害の問題と、今回の案件について、その後の処理であるとか、忖度について、共通点と相違点、何か感じるところがあればお願いします。

 港社長は曖昧な返答に終始したが、遠藤龍之介副会長(当時)は率先してこう答えた。

遠藤龍之介氏

「わたくしからもお答えします。旧ジャニーズ事務所の問題、これは総括すると芸能界の特殊な性質が表に出たという事件だったと思います。今回の事件というのは先ほど申し上げたように、その真偽に関してはまだわからないのですが、もしそれが類似系だとすれば、あの時の教訓というのをですね、充分活かし切れなかったんだろうなというふうに思っております」

遠藤氏の回答の要旨は以下。

・旧ジャニーズ事務所の問題を総括すると芸能界の特殊な性質が表に出たという事件だった

・今回の事件が類似系だとすれば、あの時の教訓を充分活かし切れなかったと思っている

ある意味、この回答を引き出したことは大きいと思っている。第三者委員会の報告にも「地続き」「類似系」とも文言が出てくる。

 そして、ジャニーズ問題との比較がある。

「旧ジャニーズ事務所問題との比較」

 旧ジャニーズ事務所の有力な経営者権プロデューサーによる性加害を知りながら、テレビ各局の編成制作局幹部が同事務所の人気タレントをキャスティングしたいがために同事務所のタレントの出演を継続してきたことを指摘、中居氏についても性加害を知りながらフジテレビの編成制作局の幹部が出演を継続させたことを問題視している。旧ジャニーズ事務所問題への深い検証がなされていないことが指摘された。

‟モンスター”を生んだ背景

 ここで、なにより改めて今回の2つの会見を通しての雑感だが、ある意味これが本質だと思うことを述べておく。

 キー局の著名なプロデューサーを顎で使って権力者然として権力を揮い、性加害を行ってトラブルになったとしてもその隠蔽工作的な指示を当該プロデューサーへ行う中居氏のような〝モンスター〟をなぜ生んでしまったのか。そこがこの問題の核となる。

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続きは、1220文字あります。
  • なぜ中居正広は‟モンスター”になったのか
  • 清水社長の会見で訊いたこと
  • 質問者のスキルと質は

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