統一教会側からのスラップ訴訟「エイト三部作」最新報告

解散命令が出された統一教会。その統一教会サイドからは私(鈴木エイト)に対して3件のスラップ訴訟が提起されている。原告側は「鈴木エイト三部作」と名付け、一連の訴訟の目的を「鈴木エイトからメディアの仕事を取り上げる」と喧伝。言論封殺を目論む教団側からの攻撃に対し、鈴木エイト側は弁護団を結成し対抗。3つの訴訟の現状をまとめました。
鈴木エイト 2025.04.07
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「エイト三部作」3件、3,300万円請求のスラップ訴訟

 統一教会への解散命令が請求された2013年10月13日、その9日前の10月4日、私に対し2件の訴訟が起こされた。一件は統一教会から業務委託を受け報酬を得ている関連団体の代表からの名誉棄損訴訟、もう一件は統一教会の関連団体のUPF(天宙平和連合)の日本支部UPF-Japanからの名誉棄損訴訟。それぞれの請求額は1,100万円という法外なものであり、これだけでスラップ訴訟と云えるものだ。

2023年10月4日、東京地裁司法記者クラブ、原告側会見での代理人の発言(やや日刊カルト新聞より)

2023年10月4日、東京地裁司法記者クラブ、原告側会見での代理人の発言(やや日刊カルト新聞より)

 提訴会見で原告代理人は、解散命令が請求されるというタイミングでの提訴について「この時期だからやらなければならないと急いだ経緯もある」と、私への提訴が解散命令請求を抑制する目的があることを認めている。また、この代理人は統一教会の集会で私への一連の訴訟の目的を「鈴木エイトからメディアの仕事を取り上げる」と発言しており、言論封殺を目論んでの提訴であると判る。

 私は自ら司法記者クラブでの原告サイドの会見を取材、質疑応答で原告が代表を務める関連団体が統一教会から報酬を得ているとの言質を取った。会見終了後に記者から囲まれたのは原告や原告代理人ではなく私の方だった。

2023年10月4日、東京地裁司法記者クラブ、原告側会見を取材する筆者(やや日刊カルト新聞より)

2023年10月4日、東京地裁司法記者クラブ、原告側会見を取材する筆者(やや日刊カルト新聞より)

 直近のもう一件、3件目は統一教会の青年部長の男性が私に信仰を暴露されたとしてプライバシー侵害で提訴したものだ。

原告の主張の一部を認める不可解な判決

 関連団体の代表からの名誉棄損訴訟については、判決言い渡しが1月31日にあった。東京地裁は原告の請求のほとんどを棄却したが一部を認容、1100万円の請求額の1%である11万円の支払いを命じた。

 原告側は5つの訴因を挙げ、総合して私が一切発信していない「嘘つきのペテン師」なる言葉を拵えて名誉棄損を主張していたが、原告が求めた私のSNS投稿の削除なども含めて東京地裁は棄却している。判決では2つの訴因にある「引きこもり」との記述や発言を名誉棄損としたが、ひとつは2015年にネット媒体『やや日刊カルト新聞』へ掲載した別テーマの記事の中の写真のキャプションである。だが、原告は何の抗議もしていない。原告は2010年に『やや日刊カルト新聞』について「もっと中立に書いてください」と私に告げており、日ごろから記事をチェックしていたことが判る。

 もう一つの訴因は、テレビ番組のコメンテーターとして出演した際の発言。

「ほぼ引きこもり状態の中、自分よりはるかに体格の劣る母親と二人きりの時も出ていこうとしなかった、外形的にはほぼ引きこもり状態だったと思われんですよね」

 これは民事上の確定判決に対して論評をしたものに過ぎない。だが、東京地裁はこの論評自体を名誉棄損とした。

 原告は統一教会が組織的に街頭で偽装勧誘を行う伝道機動隊「伝機」での活動などしており、心配した親族が脱会説得を試みた際にトラブルとなり「長期間監禁された」と訴え、別の民事訴訟において2015年に勝訴判決が確定している。一方、この原告が刑事告訴していた刑事事件としては東京地検が「嫌疑不十分」として不起訴処分にしており、原告が行った不服申し立てに対し検察審査会は逮捕監禁致傷罪について「この様に申立人のことを大事な、大切な家族として思っている被疑者らが申立人に対して傷害を負わせたとすることについては疑問である」強要未遂罪について「脅迫して棄教を強要したとする申立人の主張は疑問である」として「本件が強要未遂、逮捕監禁致傷罪に当たるとするには、多くの疑問があり、よって議決の趣旨に記載のとおりの結論に至った」と却下、不起訴相当との判断をしている。

 私は検察審査会の決定などを総合的に判断して、当初の経緯はさておき、原告が自分の意思で留まっていたものと思われることなどから、テレビ番組のなかで論評した。民事訴訟の判決への論評自体を名誉棄損としたことは表現の自由の観点からも問題である。

 判決文には、裁判所の判決への批判であれば問題がないような文言があるが、「判決の認定を覆すべき資料が存在していたと認めるに足りる証拠はない」として民事訴訟の判決内容に加えて新たな情報を得ていないのだから真実相当性がないとの判断をしており、民事訴訟の確定判決への疑義や論評自体を認めていない。この判決内容には、様々な分野の専門家から訝しむ声が挙がっている。

 原告側が主張していた他の訴因も原告に対する発言ではないものなどを素因としており、筋違いなものとして棄却された。全面的な請求棄却を予想していたため、一部とはいえ原告の主張を認める判決が出たことは納得できるものでないため、東京高裁へ控訴した。6月24日(火)の11時に東京高裁第808法廷で第1回の口頭弁論が開かれる。 

一審原告の控訴理由書

一審原告(統一教会信者、関連団体代表)による控訴理由書が本日(4/7)に東京高裁へ提出された。

 控訴理由書を確認すると以下の記述がある。

>実際、本件発言④の直後、上記のように解釈した慣習と読者によって「どうでもいい」発言はSNSで批判を呼び「ジャーナリスト失格です」と烈しく弾劾された

 とあり、証拠説明書の「立証趣旨」にも「本件発言④がXで炎上した事実」とあったが、甲号証と「作成者」を見ると悪質な統一教会シンパと信者の投稿ばかりである。

関連団体からの訴訟は5月に判決言い渡し

 2件目のUPF-Japanからの提訴内容については、私は原告であるUPF-Japanに対する発言や発信は一切行っておらず、原告の主張は失当で、そもそもが筋違いの訴訟である。口頭弁論期日では毎回、原告代理人が提出する書面を持ってくるのを「失念」するなどしている。

 この訴訟は5月14日(水)の15時に東京地裁第705法廷で判決の言い渡しがある。

自ら信仰を公開している青年部長がプライバシー侵害を主張

 3件目の統一教会青年部長の男性からのプライバシー侵害を主張する民事訴訟。2024年9月、提訴がなされ1,100万円を請求、原告側が会見を開いた。訴状を読むと、私の講演やSNSで信仰をみだりに公開され、生きがいだった代表を務めるボランティアグループの活動もできなくなり、プライバシー侵害を受けたなどと主張している。提訴時の会見でも大柄な体躯を振るわせて号泣していたという。

 だが、この青年部長の主張は支離滅裂であり、ツッコミどころ満載である。なぜならこの青年部長は…

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